「Webgeki(ウェブゲキ)」というサービスのβ版をリリースして、一週間経った時点での総括と今後の方針。
再現性のある事例ではないと思うけど、何らかの教訓はあるかもしれない。長いですが気になる方はどうぞ。あとWebgekiファンの方やWebgekiの今後が気になる方も。
まず結果から
という感じですね。はい。
β版リリース前の想定
Webgekiは、自分のツイッターやはてなアカウントを使ってじわじわと広げていくことを想定したサービスだった。最初からこれほど人が来るとは考えてなくて、自分のブログやツイッターで「Webgekiやってあげてもいいよ!」という人を見つけて、自分で試しにバトルしてみる、みたいな牧歌的な感じでやるつもりだった。
ブログが「はてなブックマーク」のホッテントリに取り上げられてそこから流入が来ることは、正直期待していたのだけど、期待してはいけないとも思っていた。(不確定要素なので。)
あくまで事前の想定としては、僕(しっきー)と仲良しな人とでWebgekiをやって、UIなどを検証したり、もし面白いと思ってくれた人がいたら拡散して、じわじわと広がっていくことをイメージしていた。
β版の実際
ブログ記事が2回くらいはてブでバズり、初期流入がびっくりするくらい多かった。
β版プレリリースの時点で、知り合いのブロガーさんに使っていただけたりして「あったけえ…」という感じだった。この時点で方針を変更して、自分はあまり出しゃばらないで、成り行きを見守ることにした。
1日目:論戦の勝敗を判定するジャッジという仕組みがよく理解されてなくて心配に。しっきーアカウントでジャッジだけやることにする。
2日目:驚くほどジャッジの仕組みがちゃんと機能して、面白い論戦もあり、さらに初日よりもランク戦の数が増えた。β版の時点でいけるんじゃね感がやばかった。そしてこのときがピーク\(^o^)/
3日目:内容自体は2日目より洗練されていたが、成立したバトルの数が減って不安になる。
4日目:急にユーザーが少なくなりはじめる。恐怖に震える/(^o^)\
5日目:オワコンの匂いがサイト内に立ち込める。
6日目:どうやったらWebgekiを立て直せるのか議論がメインコンテンツになる。
7日目:人がいないからマッチングしない。マッチングしないから人がいなくなる。ランク戦成立数が0に。
個人的には学ぶことの多いβ版リリースだったと思う。
もともとはじわ伸びすると考えていて、少数のユーザーと意見を交わしながら検証していくつもりだった。ただβ版がすごく流行るようだったら、そのまま本リリースに踏み切るというプランもあった。だから、2日目で「え!これすごい!行けるんじゃね?」と思って、上げて落とされる感じでつらかった。というより、ユーザーが離れていくことの「怖さ」みたいなものがあった。
0か100かみたいな怖さ。開発中は、頑張ってるんだから、0と100の中間…30点とか50点とか70点があるんだと思ってたんだけど、50点くらいの出来だったらもうそれは0とまったく同じ、みたいな怖さを実感した。
ユーザーが来ないことは想定していても、たくさん来て急に離れていくことはあんまり想定していなかったので今から考えると甘すぎる。ともかく、いろんな事情とか情況を加味した上でも、ユーザーの継続率が低いのはヤバい。
継続率が高ければ広告を打つみたいな施策にも意味があるのだけど、低かったらわりとどうしようもない。もちろんCGMには一定数のユーザーがいることで回り始めるという側面もあるにはあるが。
自分が積極的に参加して人を集めることもできなくはなかったし、プロモーションのために撃てる弾もあったのだが、それがもともと本リリース用の手段だったことと、プロダクトの自力を確かめたいというのもあって、ぐっと我慢した。
ポジティブに考えるなら、初期にたくさん流入があったのは僥倖だったと思う。重要なことが検証できないまま先に進めるよりも、ちゃんと良くない現状を認識できたほうが良い。
そしてこれから、「もともとWebgekiはどういう形でプロモーションする予定で、どういう修正を迫られたか?」を書いていく。長いのでWebgekiファンの方以外はブラウザバックを推奨。
パブリックとプライベート
まず、コンテンツを考えるにあたって、「パブリック」寄りと「プライベート」寄りの2極があると考えている。
簡単に言うと、パブリックは「見ていて楽しい」で、プライベートは「やっていて楽しい」。人は、自分が関与しないものにはクオリティを求めるけど、自分に関わりがあると感じるものなら低クオリティでも満足しがちだ。
インターネットのサービスなら、YouTubeやニコニコ動画はパブリック。LINEやチャットサイトはプライベートだ。
ウェブに限らず言えば、プロスポーツやテレビ放映などはパブリックで、友達とスポーツして遊ぶとか恋人とデートするとかがプライベート。
もちろん中間もある。プロのスポーツにしても、地元に根付いたスポーツビジネスはプライベートに寄っていると言える。会って握手できるようなアイドルも。
新しいサービスで参入しようとするとき、パブリックなものを狙うかプライベートなものを狙うかがあるのだけど、どちらもそれぞれ難しさがある。
パブリックなものは、見る価値があるものを生み出さなけれならないので、言うまでもなく難しい。プライベートなものは、プライベートな繋がりが生まれる場所があればそれで成立するので、ある意味では簡単だが、無根拠であるだけに競合が多く、やっぱり難しい。
それでも、最近はプライベートのほうに潮流があるように思える。そして、Webgekiは、その理念とか扱う対象からして、パブリック……というかプライベートのアンチと言っていい。
我ながら意識高すぎてビビる。
Webgekiのプロモーション方法として考えていたこと
宣伝の資金に乏しい場合、パブリックに寄せたほうが広げていきやすいんじゃないかと個人的には思っていた。
何らかのサービスをはじめようとするとき、Webgekiよりも勝算の高そうなアイデアもあったが、現実的にやれそうなものがWebgekiだった。
人手と元手がないとできることは限られる。ベンチャーキャピタルから調達して、それを活動資金や広告資金にするというのが王道を征くやり方なのだろうが、それだとあまりバカバカしいことはできなくなる。
もし一つWebgekiの優れたところを挙げろと言われたら、個人メディアくらいの規模から始めることができて、なおかつ大規模なプラットフォームになる可能性のあるサービス、と答えるだろう。
本リリースからしばらくは、自分のブログやツイッターで相手を募集してどんどん論戦し、同じ機能を使いたいという人に場所を提供していくことで、じわじわWebgekiを広めるつもりだ。それが想定していたメインのプロモーション方法。
CGMはユーザーがいないと成り立たないので、当然ながら流入を考える必要がある。広告、ソーシャル、口コミ、SEOなどがあるけど、Webgekiが最も重視しているのは、実はSEOだ。
日々のホットトピックで検索上位を狙う。毎日話題が供給されるし、検索する層が一定数いること、対話形式の文章でも検索上位をとれることは検証済みだ。ホットトピックは、PVを稼ぎやすいし注目を浴びやすいのだけど、永続性がなく収益もおいしくないから強いアフィリエイターは力を入れない。ひっかかるのはニュースサイトか個人ブログが多い。だからわりと簡単にとれる。
CGMは検索弱いというのが通説だけど、掲示板でだべってるようなサイトと検索上位狙うためにライターが書いてるサイト比較したらそりゃ後者が強いのは当たり前。検索を強くするには関連ワードとか拾って書いていく必要があるんだけど、僕がやるのなら論戦中にそういうワードを意図的に盛り込んでいくこともできる。
ちなみに、Webgekiのユーザー数は急激に落ちてるけど、検索流入だけは順調に伸びてる。
これはsearch consoleで、まだ8月16日分しか読み込まれてないが、効果は出ている。
Webgekiの「ランク戦」1回で書かれる字数は平均2500程度。1週間の間に約60回のランク戦が行われたが、それだけでも15万字がサイトに蓄積されたことになる。
ドメインが認識されて2週間も経っていないにしてはそこそこ強く、ランク戦のタイトルを検索欄に打ち込んでみればほとんどが1ページ目か2ページ目にくると思う。
検索流入で来た人がWebgekiを使ってくれるとはもちろん限らないが、検索エンジンを使うくらいにはリテラシーが高く、日々話題になるニュースに関心を持った層が1%でもWebgekiというサイトに興味を持ってくれれば御の字。どんどん検索でヒットするコンテンツを蓄積させていけばいい。
ちなみに、リリースから2日目の盛り上がりのピーク時に行われたランク戦は18回なのだけど、これくらいなら、サイトに張り付いている余裕があれば、僕がずっとWebgekiをやっていれば可能だ。1回30分で、休憩とマッチング時間を含めても12時間から14時間くらいあれば十分だと思う。
最初のうちは「しっきーと論戦できるサイト」くらいの規模で、そこから広げていく算段がある。今までブログやウェブメディアやってきたことの経験の延長上にある戦略なので、最初にやるにはまあ妥当かなという気がする。
人が気になってしまうような話題を扱いやすいのがWebgekiのメリットで、その意味ではバズや口コミも期待してはいるのだけど、SEOのほうが確実性が高いので、そっちを重視している。
初期のプロモーション想定の変更
というわけで、Webgekiは、少数(初期は運営自ら)がコンテンツを作成し、それを見る人が増えていけば、その中の何人かは作る側に回るだろうという、ガチガチのパブリック志向だった。
もちろん論戦するのは負担がかかることだけど、ニコ生とかツイキャスみたいな感じで、Webgekiが注目の集まる場所でさえあれば、やりたいと考える人は一定数いると踏んでいる。
しかし、β版で多くの流入があり、かなりいい感じに論戦が盛り上がって、そして離れていった人が多かったのはショックだった。おそらく労力に見合わないと思ったのだろう。それも当然で、強い人がそこにたくさんいるとか、多くの観客に見られるような場所でなければ、貴重な時間と労力をつかって論戦する価値はない。
論戦をやってレートを上げることに価値が生まれるためには、ある種の権威が必要になる。出版社なんかが大々的にサービスを発表して議論に強い人募集とかやると、自信のある人が集まってくるのかもしれないが、名の知れない小規模なサービスの上位になることに価値を感じる人がいるかどうかは怪しい。しかも「しっきーのブログ」でいろいろと書いて程度が知られてしまっている僕が演出したような場所でもあるし。
最初に想定していた戦略に影が差してきたので、ピボットする必要があった。
ユーザーからはやっていてあまり快適なものではないという意見が多かった。また、チャット形式の「エンジョイ」のほうが盛り上がっていた。
色々と考えた末に、理念と齟齬がでるにしても、サイトを全体的にプライベートに寄せようという話になった。つまり、使っているだけで楽しいことを重視する方針に。
直近で改善したこととこれからやること
8月22日に行ったアップデートの詳細と今後のアップデートについて - Webgeki
- 「エンジョイバトル」を「チャット」に
- ゲストアカウントでもプロフィールを編集できるように
- フレンド機能を追加
- ゲストアカウントの機能を追加
- 3つのゲームモードでランク戦が遊べるように
という形に変えた。
今後は
- パスワード付きのプライベートチャット
- メッセージ機能
- チームで論戦
みたいなものを実装していく。これだけでも既存のチャットサービスの上位互換くらいの機能はある。
楽しくわいわい騒ぐ感じでWebgekiができるとか、同じ考えを持ったユーザーと交流できて友達になれるみたいな感じにしていくつもり。(もちろん、元のガチ志向のWebgekiと住み分けをした上でだが。)
僕自身がリア充を憎む誇り高きキモヲタなので、こういう施策は苦々しくはあるのだが、それでもやってみる必要がある。
(もちろんこの方針で駄目だと思ったらまた変更する。色んな手段があるなかで、今はそれを試せる機会だと思っているので。)
いずれにしろ、ガチでやろうとする人がWebgekiで上位になることに価値を感じるためにも、Webgekiというサイト自体にある程度のユーザーがいるようにしなければならない。
本リリースに向けて
まだWebgekiに残ってくれているユーザーの皆様、心から感謝申し上げます。
意見や要望があったら遠慮なくチャットとかで言ってほしい。
今後の予定だが、本リリースまでにはちょっと時間がかかるかもしれない。本番として打ち出した後にユーザーに見放されると後は畳むしかないので、できるだけ勝算を揃えてからやりたい。マッチングする機会を逃すのはもったいないので、流行ってからアプリを出すのではなく、アプリも同時に出す予定。
もちろん、現在稼働しているWebgeki自体はずっと開放しておくし、ちょくちょく手を加えて直していく。たまにでも使ってくれる人がいたら嬉しいな。
今のWebgekiは、その殺伐したコンセプトに反して、大自然の中の小さな家のような温かみのあるウェブサービスになってると思う。
広々としているのに人がいないので自由に羽を伸ばせる。廃墟マニアの人も歓迎したい。「ランク戦」の機能などもすごみのある古代マシーンのごとく正常に機能する。
もちろん、「屋上へ行こうぜ……」という形で使ってくれて構わない。チャット形式で1対1の論戦ができて、時間も15分から90分まで自由に選択できる。結果は見やすいログになって残るので、SNSで拡散などもしやすいよ!
ネットバトルはぜひWebgekiで!
過疎っててオワコンと言われるかもしれないけど、まだ全然本気だしてないんだからね!
今のうちに住み着けば原住民を名乗れるかもよ。