『Minecraft(マインクラフト)』は販売本数が1億本を突破し、世界一売れたゲームになった。おそらく、これからも売れ続けるだろう。
小学校の教材として使われている国もあるくらいで、もはやWordやExcelみたいに必須アプリのような位置づけだ。「Minecraft(マイクロソフト)」が標準でマイクラを備えるようになるかもしれない。

- 作者: ダニエル・ゴールドベリ,リーヌス・ラーション,羽根由
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川学芸出版
- 発売日: 2014/02/26
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (4件) を見る
本書は、マインクラフトの開発者であるノッチ(マルクス・ペルソン)の、製作から大ブレイクと、その後を書いている。一つのインディーズゲームの類を見ない大成功と、クリエイターの情熱と孤独が書かれていて、おもしろい本だった。
マインクラフトが最高のゲームであることは疑う余地がない。
「レゴブロック」という玩具があって、小さい頃それで遊びまくっていた僕がマインクラフトにも夢中にならないわけがなかった。開発者のノッチはクラスで自分の居場所が見つけられなかった小中学生の時代、来る日も来る日もレゴブロックで遊んでいたそうだ。現在、レゴ社はマイクラと契約を結んで商品を販売している。
![LEGO Minecraft The Dungeon 21119 レゴ マインクラフト ダンジョン [並行輸入品] LEGO Minecraft The Dungeon 21119 レゴ マインクラフト ダンジョン [並行輸入品]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51WYvFOVp8L._SL160_.jpg)
LEGO Minecraft The Dungeon 21119 レゴ マインクラフト ダンジョン [並行輸入品]
- 出版社/メーカー: レゴ
- メディア: おもちゃ&ホビー
- この商品を含むブログ (1件) を見る
レゴはデンマークで生まれ、マイクラはスウェーデンで生まれた。北欧はITを筆頭に魅力的なコンテンツが多いという印象が、遠く離れた日本からでもある。自国の人口だけではビジネスにならないので、最初から世界市場を相手にせざるを得ない環境が、優れたものを生み出し続ける理由と説明されることが多い。
「エリクソン」や「ノキア」が有名だが、「Angry Birds」「LIMBO」などの作品や、「DICE」や「Supercell」といった有名ゲームメーカー、開発プラットフォームである「Unity」も北欧だ。
北欧では、ITベンチャーのようにゲーム会社を立ち上げて、アメリカなどの大手企業にそれを買ってもらうのが、一つの成功パターンになっているみたいだ。結果を見れば、マインクラフトもその事例として数えられるだろう。(マインクラフトを所有する「Mojang」は、2014年に25億ドルでMicrosoftに買収された。)
ノッチは莫大な金を手に入れたが、それが目的だったわけではない。彼はゲーム製作に習熟したオタクで、企業に勤めながらも、自分の裁量でオリジナルなゲームを作りたいと思い続けてきた。
いわゆる「インディーズゲーム」は、できるだけ多くの客に受けるよう成功したコンセプトを大金を投じて使い回しがちな、「大作ゲーム」と正反対のやり方をすることが多い。
「壮大なグラフィックや高額をかけてつくったシナリオよりも、これまでにない斬新なアイデアをゲームに持ち込もうとする姿勢」を重視している。
そしてマインクラフトは、インディーズゲームでありながら、並の大作ゲームをはるかに上回る人気と収益を得た。
マイクラがこれほどまでに成功した理由は、何より、プレイヤーに愛されたからだろう。
2009年に世に出されたが、一昔以上前の水準のグラフィックだったし、最初のバージョンは動物もモンスターもまともに実装されていなかった。しかし、多くのプレイヤーが初期のほとんど何もないバージョンからすでに建築をはじめていて、自分の作品のスクリーンショットを撮って公開しだしていた。
開発者のノッチは、プレイヤー達と気軽にやりとりをして、プレイヤーとクリエイターの共同作業のように、ゲームに新しい機能が追加されていった。この距離の近さは小規模な開発体制だからこそ可能だったことだ。
ノッチとしては、もともとツールを作るつもりはなくて、あくまでゲームとして、敵から身を守るために道具を作り家を建てる作品という考え方だった。しかしプレイヤーの意見を聴くと、敵が出てこない安全な状況で創作に打ち込める「クリエイティブ・モード」の要望が多かった。そして、ノッチはそれを聴き入れて実装した。
マイクラにとって僥倖だったのは、ゲーム実況動画が盛り上がっていく時期に、共に成長していけたことだ。
マイクラは砂場(サンドボックス)というジャンルに括られるほど、自由に作ったり改造したりできるソフトなのだが、それはユーチューブの動画投稿と相性が良かった。
個人で気軽に動画を投稿できる環境がなかったら、マインクラフトといえども今見られるほどの流行はしていなかっただろう。
冒頭に挙げた書籍では、「投稿者の本当の目的はマインクラフトで遊ぶことではなく、自分がつくったものをアップロードして多くの人に見てもらうことなのだ」と書かれていた。たしかに、もはやマインクラフトはゲームよりはツールに近いだろう。
しかし、ノッチはただ自分が作りたいゲームを作っていたのであり、その原点にあった思いのようなものは、マインクラフトにおいて無視することのできない要素だ。
何らかの目的を実現するためのツールではなく、マインクラフトというゲーム自体が目的だった。だからこそマイクラには、単なるUIや性能には還元できない、マイクラならではの魅力があるのだと思う。一つのゲームを作ろうとした個人の作為が、ここまで多くの人に愛されるものになっているというのは、目を見張るものがある。
だが、そのマインクラフトがインディ・ゲーム製作のロマンなのかと言うと、そんなに単純な話でもなさそうだ。ユーザー数が増えれば増えるほど、運営に労力をとられ、初期の理想からは離れていく。
ノッチはマイクラを手放し、巨万の富を得て豪邸も買ってみたけれど、本人も色々と発言しているように順風満帆というわけにはいかないみたいだ。若くして偉業を達成してしまえば、逆にその後の人生がつらくなるということもあるのかもしれない。
それにしても、マインクラフトが世に出たのは2009年。25億ドルのバイアウトが2014年。ものすごい速度と規模だ。たった5年でこれなので、本当に人生何があるかわからないね。

- 出版社/メーカー: 日本マイクロソフト
- 発売日: 2016/06/23
- メディア: Video Game
- この商品を含むブログを見る