ラーメンってすごく日本らしい食べ物だと思ってる。
ときどき、ラーメン屋になりたいと思うことがある。一品の味をひたすら追求する生き方って憧れるよね。成功したら系列店ができて大儲けできるのもロマンがある。なんならバンダナ巻いて腕組みしてポエム詠んだりもしてみたい。
アメリカでは日本食としてラーメンが流行してるってテレビでやってた。欧米では麺を啜るのはマナー違反だから、啜らずに噛んで食べるらしいね。そのために海外のラーメンは麺が短めらしい。そんな食べ方しておいしいのだろうか? オリエンタリズムの一種として珍しがられてるだけかもしれない。
もともとラーメンは中国のもので、伝わった先の日本のほうが一般的な料理になってる。というより、ラーメンは現代の日本だからこそ賑わっている食文化だと思う。
ある種の広くて緩い同質性を基盤にした上で、それぞれ特色を出せる余地がある。ラーメンほど一つの形式の上に創意や文化や思想が上乗せされてきた料理はないだろう。また、安上がりで身体に悪いジャンクフードであり、大衆の食べ物といった点も見逃せない特徴だ。
ラーメンをフランス料理の考え方なんかと比較してみると面白い。
最上級のフランス料理的なものは、最も格の高い料理なのだろうが、最も美味しい料理なのかは疑問だ。少なくとも、万人にとってのベストではないだろう。
フランス料理はアートと同じで、それを理解して味わうために知識と教育が必要になる。単なる「旨い味」ではなく、歴史と形式を理解したうえで料理を味わい、そこに解釈と感動があって……みたいな感じだ。
だからフランス料理には、しかるべき振る舞い方やマナーがあり、前菜が出てオードブルが出てスープが出てみたいな形式があり、各料理に決められたワインの組み合わせがあり、とても嫌らしい仕組みになっている。この文脈でこれが出てくるとこう解釈できる、みたいなことが料理の楽しみに含まれていて、知的洗練が要求されるのだ。
もともとはヨーロッパの王侯貴族や上流階級のものであり、そこには権威が伴うし、外交なんかにも利用される。机に並べられたものを好きな順番で好きなだけ食べて、みたいな考え方をあえて否定することによってそれは成り立つ。(日本の懐石料理にも地域によってはそれに近い考え方がありますどすえ)
だから、何も考えずに食べて「くそうめえ!!」と思うようなものでもない。もちろん日本のフランス料理は日本人向けに作られているが。
階層とか洗練が前提としてあって、支配階級と大衆を区別するためのものというところがフランス料理にはある。そういうことは知っておいたほうがいいかもしれない。じゃないとホリエモンとか藤沢数希のレストラン案内みたいなことを書いちゃうぞ!
高いし難解な本ではあるけど、サイバーメガネさんの好きな『ディスタンクシオン』を読んでみるといいよ。

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ようは、嫌なやつらなんだよあいつらは!
単純な旨さみたいなものを求めるなら、「叙々苑」に行って一番高級な肉を頼むのがいいと思うぜ。A5牛ってやつをな。

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てなわけで、ラーメンとフランス料理の関係って、日本の漫画とヨーロッパのアートの関係に似てるなあって思った。
わかりやすい入り口を掲げてそこから差異を見出すのか、歴史と伝統の上で洗練を追求していくのか、みたいな。
ジャパニーズ・ドリームは漫画家が担ってるみたいなことを言われるけど、ラーメンにも似たような開放感を感じる。
基本的には低俗なもので、だからこそ色んな試みを追求できるし、一発当てれる夢がある。「ラーメン」というジャンルが確立されているからこそ、作り手も受け手も、人が集まってくるような文化が作られていく。
カップラーメンだって日本人の偉大な発明だしね。
せっかく日本に暮らしているのだから、もっとラーメンというものにどっぷり浸かってみるのもいいかもしれない。
まあ、「塩分とりすぎで身体に悪い」とか「なんで炭水化物の麺を汁に突っ込んだだけの食い物が1000円近くするんだ?」とか「一部の店が宗教化しててくさい」みたいなことはあるけれど。
せっかくなので僕が行ったことのある有名チェーン店のレポを載せておこう。
天下一品
たまに食べたくなる味。食べてるときに特別旨いと感じるわけでもないのだけれど、でもなんか満たされた気分になる。そして損した気分にもなる。あの無内容で身体に悪そうな感じがたまらない。新宿の歌舞伎町にある狭くて汚い店が好き。ちなみに「あっさり」は一度も頼んだことがない。「こってり」と「あっさり」ではカロリーが3倍近く違うとか。
蒙古タンメン中本
有名なラーメンチェーンの中では一番好きかもしれない。辛さと旨さの絶妙なマッチング。あの深みのある汁は本当にすごいよ。「蒙古タンメン」か「五目蒙古タンメン」を食べることが多い。よく行くのは渋谷の映画館下にある店舗。比較的暑苦しくないのがよい。
一風堂
一風堂もわりと好きではある。汁を飲み干さなければヘルシー。海外でも人気があるらしい。白も赤も旨いし、他の新作メニューも工夫があって楽しい感じ。彼女と行けるラーメン屋に認定してやってもいい。しかし並んでまで食べたいとは思わない。あと行列にカップルが多くてウザい。横浜に2つ店舗があるよね。
ラーメン二郎
量がヤバいと話題で、ネットでは賛否両論のラーメン二郎。藤沢店に2回だけ行ったのだけど、個人的にはダメだった。味はそこまで悪くないと思う。ただ色々と不親切だし、それで悦に浸ってる感じがちょっとキモい。まあそれも含めてターゲティングとブランド化に成功しているのだろう。一度目はどのタイミングで麺少なめって言えばいいかわからなくて、通常サイズを死ぬ思いして食べた。二度目は麺半分でちゃんと味わって食べたのだけど、もう自分から行くことはないと思う。
8番ラーメン
北陸で展開されているラーメンチェーン店。小さい頃はよく食べた。安定感のある味。しかし贔屓目に見ても全国展開するほどの実力はないと思われる。
そんなところだろうか。
あと、これはラーメンチェーンと言っていいのかわからないけど、リンガーハットにはとてもよく行く。いつか九州に行ってリンガーハットより美味しいちゃんぽん麺も食べてみたい。中華料理店だけど日高屋のラーメンも好きだな。
ただ「麺類」までジャンルを広げるなら、「箱根そば」が一番かな。あれは小田急線の良心ですよ。

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