しっきーのブログ

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石油の埋蔵量は誰が決めるのか?

 小さい頃、僕が大人になる時代には石油が枯渇して太陽発電などに頼って生きていかなければならない、みたいな話を聴いて不安になった記憶がある。

 しかし現在、これから今までと同じようなペースで石油を使っても50年以上はもつだろうと予想されている。なぜそのようなことが起こるのだろうか?


石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか? エネルギー情報学入門 (文春新書)

石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか? エネルギー情報学入門 (文春新書)

 今回読んだ本はこれ。


「埋蔵量」ってなんだ?

 地球にいったいどれだけの石油が眠っているかはまだわからない。ただ、「埋蔵量」は「貯蔵量」とは違う。

 石油の埋蔵量をどのように算出するかについて、世界的に統一された定義はまだないらしいのだが、おおまかに「技術的に回収可能か?」と「回収した場合採算がとれるのか?」によって決められる。

 つまり、技術革新によって新しく回収できるようになった油田があれば埋蔵量は増加するし、仮に石油が希少になってその価値が高まり、手間のかかる回収方法で採算がとれるようになっても埋蔵量は増える。

 石油の貯蔵量は一定でも、石油の「埋蔵量」は、技術の進歩と石油価格の高騰によって徐々に「成長」しているのだ。


アメリカは今後国力を増していく?

 中東におけるプレゼンスが低下しているとか、GDPが中国に抜かれるかもしれないとか、アメリカ衰退論は言われているが、著者は今後もアメリカは国力を増していくだろうと予測している。エネルギーという視点で見れば、産油国としての長い歴史と技術があるアメリカは、まだまだ覇権を握れる力を持っている。


LNGって何?

 油田が少ない日本には馴染みのない話だが、アメリカのような産油国では天然ガスの通るパイプラインが国中に引かれている。ちなみに、石油と天然ガスは同じように地下に眠っていて、液体のものが石油で気体のものが天然ガスだ。

 天然ガスは生産地周辺での消費が圧倒的に多い資源だ。気体である天然ガスは、基本的には回収した場所からパイプを引いて使う。天然ガスをマイナス162度まで冷やして液化し、タンカーに入れて持ち運べるようにするのが「LNG(Liquefied Natural Gas)」という技術だ。

 油田もなく、パイプラインも整備されていない日本はこれに頼っている。現在、世界全体のLNG貿易量の約37%を日本だけで輸入しているが、かつてその比率が50%を超えていたときもあった。


シェール革命とは?

 世界のエネルギー地図を大きく塗り替えるとか言われているシェール革命だが、これは圧倒的にアメリカが先導している。石油開発は、穴を掘るだけで多くの資金を必要とするが、当たった場合は莫大な利益が得られる、超ハイリスク・ハイリターンな事業だ。それでもアメリカにはベンチャー企業のような小規模独立系石油開発業者がたくさんいて、それが石油開発産業の裾野を広げている。

 地下資源は国家の財産という考え方がほとんどの国にとって普通で、石油開発でまず最初にやるべきは政府から「鉱業権」を取得することなのだが、アメリカは違う。世界中でアメリカとカナダだけは、地下資源が土地所有者のものになっているので、鉱業権は土地所有者に帰属する。だから、土地の所有者と自由に交渉することによって、スピーディーに石油開発を進めることができるのだ。

 また、アメリカでは基幹パイプラインの第三者使用が保証されて、天然ガスを発見した後すぐに市場で販売しやすいなど、様々な制度的後押しがされている。


 シェールガスは、頁岩(シェール)層から採取される天然ガスで、従来型の油田やガス田と比べてエネルギー密度が粗いのが難点だったが、技術革新により回収して利益を出すことが可能になった。現状で、それをうまくやれているのはアメリカだ。


油田開発の職人芸

 シェール層からエネルギーを回収するのは難しい。しかし、水圧破砕法(人工的に亀裂を生じさせ、散在している原油や天然ガスを一箇所に集める)や、振動による地層解析の精密化によって、回収率は向上し続けている。

 しかし、それに必要な技術は誰にでもできるものではなく、職人芸に近いものだそうだ。一朝一夕ではない、長い油田開発の蓄積がシュール革命を可能にした。技術が進歩してもそれだけで地層のことがわかるわけではなく、経験がものを言う世界らしい。

 よって、長い石油開発文化と制度を持っているアメリカ以外の国では、シュール革命というほどの進展は見込めないだろうと著者は見ている。ちなみに日本では、地質年代が新しいのでシュールガスの商業生産は期待できない。日本人が油田などのエネルギーにあまり関心を持っていないのも、身近にないものだから仕方ないのかもしれない。原子力発電にはみんな関心を持っているけどね。


有機起源説と無機起源説

 著者はエネルギー界の池上彰と煽られているらしいが、日本人に馴染みのないエネルギー問題を扱っているという点においては良い本だと思う。

 興味深かったのは、石油と天然ガスの生成起源には二つの定説があるという話。今支持する人が多い説は、ご存知の通り、化石時代に死んだ有機生物の死がいが沈殿して石油になったという「有機起源説」だが、「無機起源説」というものもあるらしい。

 石油や天然ガスが、マグマの中の無機物質から生成したとするのが無機起源説。旧ソ連地帯にある石油・天然ガスの賦存状況を見ると、無機起源説のほうが合理的な説明ができるケースが多いと見る人もいるようだ。

 地球のマグマはほぼ無限なので、無機起源説によれば、これから生産可能な石油の量は有機起源説で考えられている量よりもずっと多いらしい。



石油とマネーの新・世界覇権図――アメリカの中東戦略で世界は激変する

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