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しっきーのブログ

ひろいこころで\(^o^)/

ゲームは冗長さを縮減する

 人間の認識や行動があらゆる複雑さを縮減した上で成り立っていることは周知の事実だが、デジタル機器を、その効果を押し進めるものとして捉えることも可能だろう。例えば、本を読むよりも、スマートフォンをいじるほうが集中力を必要としない。

 自分の指先の動きに素早いレスポンスが返ってくる。反応の速度と、手続きの円滑さは、それ自体「力」を持っている。


 その、入力に対する反応を積み上げて作られるのがデジタルゲームと言える。「「ゲーム」の定義と、ゲームが持つ超越性について」で述べたように、現実の冗長さに対しての、手続きの速度と確信が、ゲームの持つ快楽の源泉になっている。

 現実で、一日中勉強して自己研鑚するとか、仕事を進めて結果を出すみたいなことは、普通の人には難しい。無限に冗長な現実の時間に対抗するには、人間の集中力はあまりに心細い。(進捗やばいです)

 でも、徹夜でゲームし続けることは誰にだってできる。なぜなら、そこで反応し、確信し、積み重なっていくのは、人間ではなくゲームの側にある数値だからだ。



 ゲームから大切なことを学びました、みたいな考えには、注意が必要だ。ゲーム内の手法や考え方は、現実にも応用可能なものなのだろうが、もともと現実にある「夢」をゲームの中に持ってきた経緯を忘れてはいけない。

 オンラインゲームの中で成功しているプレイヤーが、その気になれば現実でも成功するとは限らない。「ボタンを押す」と「その気になる」の間に隔たる溝を甘く見るべきではない。


 日本のゲームは、誰でも簡単に成功するように、夢を見せてくれるように作られている。現実の努力は、ボタンを押せばレベルが上がるようなRPGとは似ているようで違う。僕たちは、まずはじめに、速度も確信もなしに時間が流れる現実の冗長さと向き合わなければならない。

 ゲームをプレイするみたいに勉強や仕事ができればいいなあ、とは思うけど、本来それらの逃避先としてゲームがあった。そして、実際に現実をゲームのようにプレイしてしまう(上手くいってしまう)のは危険で、人間の冗長な部分を無視すれば、個人レベルではうまくいっても、どこかで行き詰まるし、場合によっては他者を傷つけることになる。あくまで、二次元は二次元であり、夢は夢であるべきかもしれない。



 逆に言えば、ゲームをデザインするときに必要なのは、現実の冗長さを回避した夢を見せることかもしれない。洋ゲーは「シミュレーション」という発想でゲームを作ることが多いが、現実をそのまま写し取っているわけではない。銃撃戦や、スポーツや、暴力や、カーレースなど、現実にある過激な部分を持ってこないと、ゲームとしてものにならないのだ。


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 かつて、セカンドライフと言う、インターネット上に仮想世界を作って、アバターで仮想現実を楽しもうというサービスがあった。(今もまだあるのかな?)

 これも、PCをベースにして、シミュレーションやプラットホームを指向するアメリカのゲーム会社らしい発想だ。セカンドライフが失敗した理由は色々あると思うけど、その大きなものの一つとして、現実の冗長性をゲームの中でそのまま表現してしまったことだと思う。

 仮想現実という発想はいいと思うが、現実にある冗長性をそのままゲームに持ってきてしまえば、それはゲームではなくなるだろう。というより、ウェブサービスとしてすら成り立たなくなる。

 1と0の世界は、画面が瞬時に反応し、その確信が人間の外部にあるからこそ魅力を持つ。ゲームを作ろうとする際に、もともとの魅力である「速度と確信」を殺してしまっては元も子もない。



 しかし、冗長さの対極として価値を持つゲームに、冗長さを持ち込むことによって、魅力的になっているゲームもある。

 例えば、「どうぶつの森」。


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 これも恐ろしいゲームだよね。ゆっくり流れる時間をゲームの中で表現するのは、簡単なことではないと思う。




 また、冗長さがシビアな部分と結びついている傑作としては、「ICO」と「ワンダと巨像」を挙げたい。


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 以前、ICO、ワンダと巨像に関して、「冗長なゲームという逆説」という記事を書いたことがある。

 プレイ時間の短さに対して豊饒な「遅さ」を感じるこれらの作品は、長時間の反復を圧縮して気を紛らわせるオンラインゲームやソーシャルゲームの対極にあるのかもしれない。ぜひプレイしてみてください。




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