しっきーのブログ

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グーグルやFBに並ぶウェブの絶対的な存在、『アカマイ』とはどんな企業なのか?

概要
  • 小川晃通著「アカマイ-知られざるインターネットの巨人」を読んだ。
  • アカマイっていうすごい会社があるんだって!でもアカマイって何をしてるの?
  • 「名前解決」のしくみとアカマイ社の工夫。
  • アカマイがあるからユーザーは近くにあるサーバーと通信できる。
  • インターネットは寡占が進んでいる?



 「アカマイ・テクノロジーズ(Akamai Technologies)」って知ってた?Web全体のトラフィックの15%から30%を配信する、グーグルやFacebookやAmazon並に大きな存在なんだって!

 僕は知らなかった。けっこう情報系の単位はとってると思うんだけどな。ハックな知り合い(なんでITガチ勢って男女問わず派手な髪色してるの?)に聞いてみても知らないって言われたから、日本ではあまり知られてないのかもしれない。アカマイに知名度がないのは、消費者を直接相手にするB to C企業ではなく、他社から依頼を受けてコンテンツの配信を代行するB to B(Business to Business)企業だからだ。


 アカマイの仕事は、簡単に言えば、インターネット上での通信をサポートすること。「アカマイ(Akamai)」はハワイ語で「賢い」という意味で、専門的な技術を扱う企業だ。

 現CEOで創立者でもある「トム・レイトン」は、元MITの教授で並列アルゴリズムとアーキテクチャの専門家。1998年にアカマイ社を設立した。アカマイは、ITバブル崩壊などで危機におちいったりもしたけど、ウェブログ、Facebook、YouTube、Twitter、Ustreamなどが登場し、その大規模なデータ配信の需要を受けて勢力を伸ばし続けている。



 今回参考にしたのは、小川晃通著『アカマイ-知られざるインターネットの巨人』だ。著者は「Geekなぺーじ」の人。博士号持ちのガチな技術ブロガーです。

アカマイ 知られざるインターネットの巨人 (角川EPUB選書)

アカマイ 知られざるインターネットの巨人 (角川EPUB選書)


 アカマイのサービスを一言で言うと、ユーザーが近くにあるサーバーからコンテンツを取得できるよう誘導すること

 ウェブに距離って関係ないイメージがあるけど、実はすごくある。光の速度にも限界があるし、遠ければ遠いほど通信は遅くなる。コンテンツを取得するためのサーバーはなるべくユーザーの近くにあったほうがいいのだ。



 アカマイがやってることを理解するには、少しだけインターネットの仕組みを知る必要がある。雑になるけど説明していくよ。


「名前解決」とは何か?

 みんなウェブサイト見るじゃん。そのとき、サーバーからコンテンツを取得してるんだけど、そのサーバーと通信するために「名前解決」というのをやらなきゃいけないんだよね。


 ネットを流れるデータは「パケット」という小さな単位に分けられ、「ルーター」を通って送られてくる。それから、ユーザーの手元で「パケット」に分割されたデータを組み立てる。ここらへんはネットにあまり興味ない人でも知ってると思う。「パケ放題」のパケットね。


 で、「パケット」を届ける「ルーター」は、転送先を「IPアドレス」で識別している。IPアドレスはコンピューターにも理解できる数字の羅列で書かれてるんだけど、普通の人間はウェブサイトをIPアドレスで認識してはいないよね。僕達は、「www.example.com」みたいな形の、読んだり書いたりしやすい「ドメイン名」でサイトを認識している。

 「名前解決」とは、人間にわかりやすい「ドメイン名」から、コンピューターが読める「IPアドレス」を聞き出す作業のことだ。これはウェブを見るときにブラウザが勝手にやってくれてるんだけど、ドメイン名から直接コンテンツを取得できるわけじゃなくて、まずドメイン名からIPアドレスを聞き出して、そのIPアドレスでコンテンツを取得している。これは「DNS(ドメイン・ネーム・システム)」と呼ばれる、インターネットの根幹を成す仕組みだ。一般的には、まず名前解決が行われたうえで、その結果として得られたIPアドレスを利用して通信を行う。


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 要は、ドメイン名しか分かってない状態で直接企業のサーバーと通信できるわけじゃなく、その前に別のサーバーからドメイン名に対応するIPアドレスを教えてもらわないといけないんだよ。一手間かかってる。


 さらに、上の図では、ユーザーは「キャッシュDNSサーバー」からIPアドレスを教えてもらっているけど、キャッシュDNSサーバーがドメイン名に対応するIPアドレスを知っているわけじゃない。実際には、キャッシュDNSサーバーは「権威DNSサーバー」というのに情報を聞いてIPアドレスをとってきている。また、権威DNSサーバーも一つですべてのIPアドレスを保管しているわけではなく、階層構造になっている。だから、サーバーを回って「名前」探しをしなければならない。


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 それぞれの「権威DNSサーバー」は、各自で分担して自分の責任範囲を定義し、知ってる範囲内で次を教える仕組みになっている。このように、特定箇所に負荷を集中させないことがインターネットの仕組みなのだ。

 例えば、「www.example.com」のIPアドレスを知りたい場合、まず最初に行く「ルートサーバー」は、「www.example.com」のIPアドレスが「comの権威DNSサーバー」にあるという情報だけを管理している。「comの権威DNSサーバー」は、「www.example.com」のIPアドレスが「example.comの権威サーバー」にあるという情報だけを知っていて、実際のIPアドレスは「example.comの権威サーバー」にある。

 こんなふうにしてIPアドレスを管理しているので、名前解決のためにたくさんデータのやりとりをする必要がある。ちなみに「キャッシュDNSサーバー」はIPアドレスをとってくるだけじゃなくキャッシュしておく機能がある。ウェブを見るとき最初の1回だけ時間がかかって次から軽くなることがあるけど、これはキャッシュDNSサーバーがIPアドレスを保存してくれているから。


 以上が「名前解決」の仕組みなんだけど、アカマイ社のサービスは、この「名前解決」の部分に細工をすることで成立している


アカマイがやっていること

 上述したように、ウェブにおいて端末とサーバーの距離が近いことはけっこう大事。アカマイのサービスは、ユーザーが近くにあるサーバーと通信できるようにすることだ。そして、アカマイの工夫は「名前解決」の部分にある。


 アカマイの顧客としてデータを配信したい会社は、ドメイン名の後ろにつく、例えば「edgesuite.net」などの名前を渡され、その名前によってアカマイ社のサーバーに誘導される。

 例えば、「www.example.com」というドメイン名を持つ会社なら、IPアドレスを聞かれたとき、「www.example.con.edgesuite.net」という名前を返すことになり、その名前はアカマイ社の権威DNSサーバーにつながっている。



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 どうしてこんなことをするのか?

 このとき、通常の権威DNSサーバーに代わってアカマイの権威DNSサーバーがIPアドレスを教えている。「アカマイの権威DNSサーバー」には細工がしてあって、名前解決の際、問い合わせしてくる「キャッシュDNSサーバー」に応じて回答するIPアドレスを変えることで、ユーザーが属するネットワークに最も近いと推測されるウェブサーバーへ誘導してくれる。この仕組みによって、ユーザーはコンテンツを近くのサーバーから取得することができるのだ。


 つまりアカマイがやっているのは、「世界中のユーザーが各自で行う名前解決の結果を操作することによって、ユーザーからの通信を特定の方向に誘導し、ユーザーが最も近いコンテンツを取得するように仕向ける」ことだ。

 アカマイのサービスがあるからこそ、東京のユーザーがアメリカの会社のコンテンツを都内にあるサーバーから取得することができる。アカマイ社は、インターネット上でパケットがどのような経路をたどっているか調べる「tranceroute」や、ネットに接続された機器同士の距離を推測する「Ping」などなど、復数の技術を使ってユーザーの近くにあるサーバーを特定している。


アカマイだからできる技「SureRoute」

 「SureRoute」は世界中にあるアカマイのサーバーを利用した仮想ネットワークだ。アカマイサーバー同士をTCPで接続して、アカマイだけでデータをやりとりすることによって、本来のルートよりも早く通信を行う。回線が混雑しているときでも高速でデータのやりとりができ、世界中にサーバーを設置しているアカマイだからこそできる技だ。


 インターネットができてから今まで、ネットを流れるトラフィックの量は増え続けているんだけど、特にここ数年はビデオ配信などが盛んになって爆発的に増えた。アカマイもその膨大なトラフィックをさばくために急速にサーバーを設置している。

 一方で、1パケットあたりの転送の相場は下がってきているらしい。設備増強が求められるのにサービスの単価は下がっていくというなかなか世知辛い感じ。でも「SureRoute」は1パケットあたりの単価が高くて、アカマイにとっておいしいサービスになる。でもこれは、あくまで早い転送をもとめる一部のネット業者用のプレミアサービスだ。アカマイのサーバーだけで通信し過ぎればネット全体に不都合が出てくる。アカマイはそれくらい、インターネット全体において重要な役割を担っている存在なのだ。


なぜアカマイは世界中にサーバーを置くことができるのか?

 アカマイは世界中に自社の機材を置いてもらっているが、それは、アカマイに拠点をつくらせることが、それぞれのネットワーク運営組織にとってメリットがあるから。というより、置かないとデメリットが生じるくらいだ。だが、この前提はどこから来たのか。どのようにしてアカマイが世界中に自社のサーバーを置いておけるような状況が出来上がってきたのか。これは、インターネットの「金」の話と関わっている。


 日本では、ユーザーにとってネットは「固定料金」で使い放題になってることが多い。でもプロバイダ事業者にとって、ネットは月々のトラフィックに応じて料金を支払う「重量課金」だ。トラフィックが多いほど金がかかる。アカマイ社は、通信にかかる「金」の部分を軽減することで世界中に拠点を築いてきた


 ネットワークは繋がることで便利になる。だから、企業同士もお互いのネットワーク(正確には「自律システム」)を繋いで、世界中を行き来できるルートをつくろうとする。そのとき、同じ規模のネットワーク同士が繋がる場合は、お互いに対等な関係になる

 しかし、大きな(強い)ネットワークと小さな(弱い)ネットワークが繋がる場合、大きなネットワークのほうが一方的に相手企業のパケットをやりとりしてあげることになりやすい。だから、小さなネットワークの会社は、有償で相手の会社の大きなネットワークに繋げてもらうのが一般的だ


 このような力関係が、インターネットの階層構造を作っているという側面もある。インターネットの中心になるような機能を果たしているネットワークを「ティア・ワン(Tire 1)」と呼ぶ。ティア・ワンは世界に10社くらいと言われていて、日本の「NTTコミュニケーションズ」はアジアで唯一のティア・ワン相当らしい。「ティア・ワン」の下は、「ティア・ツー」、「ティア・スリー」となっていく。

 「ティア・ワン」同士は対等に付き合い、「ティア・ツー」は「ティア・ワン」に繋いでもらうかわりにお金を払い、「ティア・ツー」同士は対等に付き合って「ティア・スリー」はお金を…というふうになっている。ネットは重量課金なので、できるだけ「ティア・ワン」などの上にあるネットワークを通過しないほうが、下の階層からすればお金を節約できることになる。


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 つまり、アカマイのサービスで、近くのサーバーからコンテンツを取得できれば、遠回りするよりもトラフィックの量を節約でき重量課金のネットではお金がかかりにくくなる。「早い」という利点だけではなく、コンテンツ業者にとって、アカマイはお金を節約できるサービスとして使われていた。このようにして、アカマイ社の技術はシュアを広げてきた。


寡占が進むインターネットの世界

 アカマイの話もだけど、本の最後のほうのWebに対する著者の考察が面白かった。2007年くらいまで、インターネットのトラフィック量トップ10は、「ティア・ワン」と呼ばれる通信事業者だったらしい。しかし2009年に行われた調査では、上位10組織にグーグルとコムキャストがランクインしたことが注目された。グーグルはYouTubeなども買収したコンテンツ事業者で、コムキャストはケーブルテレビネットワークの会社だ。

 ティアワンでもティアツーでもない、コンテンツ系の組織がインターネットにおけるトラフィックの転送量ランキングで上位に登場したのは衝撃的なことだった。ティアワンに替わる存在として、「ハイパー・ジャイアンツ」という表現が登場するようになった。


 グーグル、コムキャスト、フェイスブック、Amazon、そしてアカマイなど、ハイパージャイアンツの台頭によって、インターネットの階層構造は変わりつつあるという。特にグーグルみたいにコンテンツ事業者でもある企業は、様々な相手に対して強気に出られる。


 著者によると、アカマイは「強くて弱い存在」らしい。インターネットサービスプロバイダーなど、アカマイサーバーを設定している組織に対しては、アカマイは非常に強く出られる。最初こそ金を払ってサーバーを置いてもらっていたのだが、今ではサーバーを無料で設置できたり、電気代の負担やメンテナンスの手伝いをさせるくらいに立場が逆転した。プロバイダー側からすれば、アカマイサーバーがなければ大きなトラフィックに対処しきれなくなるおそれがあるからだ。

 しかし、コンテンツ事業者からすれば、アカマイは単なる下請けとして捉えられているそうだ。コンテンツ側は、配信を請け負う業者を選ぶ自由がある。


 コンテンツを持っている側が強いのか、それを配信するインフラ側が強いのかという話だけど、Webはインフラにも参入しやすいのが大きな特徴で、コンテンツ握ってる側のほうが今のところ優勢と言えるのかもしれない。グーグルは自社でネットワーク等の設備の大半を用意できるらしい。コンテンツとインフラの両方を自社で握るまでになっている。


 アカマイも色々と手を打っている。ここ数年は多くの事業を買収して多角化を進め、セキュリティ系ビジネスや、アクセラレーションなど、事業を模索しているらしい。これからどうなるかは今後に期待するしかない。Geekなぺーじではこれからも経過を見守ってくれると思います。



 インターネットの寡占がどんどん進んでいることを筆者は危惧しているのかもしれないと思った。アカマイは、現在ではWeb上の30%のトラフィックを運んでいると自称していて、別の調査ではグーグルがインターネットトラフィックの20%を占めているという結果がある。もしかしたら、アカマイとグーグルだけで世界のインターネットの半分のトラフィックを発生させている可能性がある


 もともとインターネットは多くの組織同士が繋がることによって組織されてきた。だが、巨大な企業が優良なサービスを次々と買収している。寡占が進み、インターネットは少数の企業が構築するネットワークへと変貌してしまう可能性もある。インターネット(Inter-net)はネットワークのネットワークという意味なんだけど、段々「グーグルがインターネット」「アカマイがインターネット」というふうになっていくかもしれない。たしかにグーグルやアカマイは僕達の生活を便利にしてるんだろうけど、こう聞くとあんまりいい感じはしないよね。



 小川晃通著「アカマイ」では、AS(自律システム)やBGPなどもちゃんと説明されてる。Web系の本にしては珍しくわかりやすく書かれている良書だと思う。この記事ではあまり正確な表現を使っていないし、図もそんなにちゃんと書いてないので、勉強したい人は本書や「Geekなぺーじ」を読んでみてね。


インターネットのカタチ―もろさが織り成す粘り強い世界―

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