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しっきーのブログ

ひろいこころで\(^o^)/

コンテンツのデジタル化の先にAKBやソーシャルゲームがある

概要
  • コンテンツはデジタル化によって価格が無料に近づいていく。そして、あらゆるコンテンツは無料との競争を強いられることになる。
  • 無料のコンテンツを前提とした上での、参加型のエンターテイメントが増えてきている。
  • そこそこのコストでそれなりのクオリティのものを作り、それを「販売する」というモデルが厳しくなってきているというのが大きな流れだが、日本のコンテンツ産業はそこまで急激な落ち込みはない。漫画やラノベやアニメなどの日本のコンテンツはもともと中小規模でできるペイラインの低い産業。
  • 生き残っている(成功している)のは、ハリウッドのような代替のきかない高クオリティのコンテンツか、無料を前提としてうまく収益を上げるモデルを作れたところ。また、流通が自由になったので収益にはそれほどこだわらない同人的なマーケットが広がり続けている。
  • AKBなどのアイドルやソーシャルゲームはうまく収益を上げる仕組みをつくりだしたが、その成功の背景にはもともと日本のコンテンツ産業が持っていた特徴がある。



コンテンツのデジタル化って何?

 まず、ここで言う「コンテンツ」は、アニメとかゲームとか漫画のことね。小説とか映画とか、広い意味では放送や広告もコンテンツって言うかな。情報の「内容=コンテンツ」ということ。今は紙もレコードもフィルムも全部デジタルデータになって、通信で情報をやり取りできるようになった。

 デジタルコンテンツの特徴は、複製がしやすいことだ。マスターコピーを作るのは大変だが、一度元をつくってしまえば複製を作るコストは著しく低い。これが家電や食品などアナログな製品と比較してのコンテンツの特徴だ。複製が容易なので、海賊版と呼ばれる違法コピーを止めるのも楽じゃない。違法コピーについては、システムを厳密にすれば防げると主張する人もいて、著作権に厳しいアメリカなんかはかなり頑張ってる。一方で日本のアニメとかは違法コピーされたものが海外で見られている。それをどう考えるのかは簡単には割り切れない問題だ。

 「WIRED」の編集長クリス・アンダーソンが出した『FREE(フリー)<無料>からお金を生み出す新戦略』という本は有名だけど、彼なんかは、遅かれ早かれすべてのコンテンツは無料になるので、むしろ無料を前提にして収益を得る仕組みを考えたほうがいいと主張している。


フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略

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 今日のもっとも興味深いビジネスモデルは、無料(フリー)からお金を生みだす道を探すところにある。遅かれ早かれ、すべての会社がフリーを利用する方法や、フリーと競いあう方法を探さざるをえなくなる。

 クリス・アンダーソンは、一番人気のものこそ無料にしてできるだけ多くの人に見せるべきで、そのコンテンツ自体を直接売るのとは別のやり方でマネタイズするべきだと言っている。仮に著作権を厳密にしてコンテンツ自体が売れる仕組みを整えたとしても、他の多くの優れたコンテンツは無料で見れるので、わざわざ金を払ってそれを見る人はいなくなる。無料から有料へのハードルは高い。すべてのコンテンツはあえて無料と闘うか、自らも無料となるしかない


 現状では、しっかり視聴料をとるハリウッドやディズニー、後は任天堂やEAなどの大手ゲーム会社なんかは、他の無料コンテンツを凌ぐ質の高さで現在の位置を保っていると言える。一方で、無料の娯楽がネットに溢れているのも事実で、そこそこの質のコンテンツをそこそこの労力で作り、それを販売するというモデルは成り立たなくなってきている。(まあ、それはコンテンツ産業に限らない。ちょうどいいくらいに働いてそれなりに儲けるという仕組み自体がなくなりつつあるのが現状かもしれない)

 クリス・アンダーソンは著書で日本にはあまり触れてないが、ここからは私見で日本のコンテンツ産業の話をしていきたい。


音楽業界

 みんな知ってるとおり、CDは売れなくなってきてるし、デジタル配信の売上も今は低下傾向にある。(日本は今だにCDがそこそこ売れる国だと海外に驚かれるらしいけど、チャートのトップはAKBと嵐が独占しているので察し)そのかわり、ライブやコンサートの売上は増している。国外国内問わず、最近のミュージシャンはYouTubeで楽曲を無料でアップして、ライブなどで収益を上げている人が多い。AKBなどのアイドルグループももうPVなんて全部無料でアップして、あとはコンサートや握手会や総選挙課金で儲けている。

 音楽業界は終わってるみたいなことを言う人もいるけど、もともと音楽の長い歴史はライブと演奏の世界だったわけで、音楽出版社とレコード会社が大々的に宣伝して楽曲自体を売っていた時代のほうがおかしいと考えることもできる。一部の人間をプロモーションして売り出すみたいな20世紀のスタービジネスが歪んでいたのであって、今はボーカロイドもあってみんなが音楽に関わりやすくなったし、むしろ本来の音楽が戻ってきつつあるというのが正しい見方だと思う。


出版業界

 出版は普通に考えて厳しい。昔は岩波一冊書けば家が建つと言われてたらしいけど、ゲームやアニメや映画がこれほど溢れていて、しかも無料で見れる時代に書籍の力が低下しないほうがおかしい。ただ、売上が減っているにしても、かなり持ちこたえてると言っていいと思う。

 もともと、小説とか漫画って、大した投資もいらないし、やろうと思えば一人でもできる。だからペイライン(払ったコストを回収できる発行部数)がすごく低いんだよね。漫画や小説などは一部の大ヒット作が注目されるけど、そこそこの部数でそれなりにぼちぼちやっていける漫画家とかもたくさんいたし、今もいる。でも段々厳しくなっているというのが現状だろう。

 ただ、今は出版社を通さずにいくらでも作品を発表できるし、同人マーケットなどもものすごく盛んだ。市場規模自体は減っていくだろうし、出版社から本を出して生計を立てるみたいなモデルはなくなりつつあるけど、だからと言って必ずしも日本の漫画の質が下がるとは限らない。お金にならなくても何かを作りたいと思ってる人はたくさんいるし、それもコンテンツが無料になっていく一つの要因だろう。そして、多分それは悪いことではない。


アニメ業界

 アニメは、書籍や漫画にくらべて比較的コストがかかる産業だ。アニメはデジタル化の前から無料(フリー)でやっていく土台がそれなりにあった。もともとテレビアニメは無料で見れるものだし、放映料も入るんだけど、それだけじゃリクープ(投資分の回収)できない。だから、作中に出てきたものと関連のあるグッズやおもちゃを売って収益を上げる。特撮とかロボットアニメなども、関連商品が売れるようなアニメをつくらなければいけないという縛りの中で出来た側面もある。深夜アニメは放映料をまったく当てにしてないし、高いDVDやフィギュアなどを一部のマニアックな層に買い支えて貰うことで成り立ってきた。「萌え文化」と言われるものもそういう収益構造に後押しされてきたところがある。一部の気に入ってくれた層に買い支えてもらう文化があったから成り立ったのだ。

 ただ、最近はアニメもかなり厳しくなっている。現場はかなりブラックらしいし、円盤を買ってくれる人も減ってきて、「化物語」とか「まどか☆マギカ」みたいな人気商品をパチンコに出さざるを得なくなってきてる。アニメは予算がなくてもそれなりに作れるけど、大儲けできない業界って言われてるよね。宮﨑駿とか富野由悠季とか庵野秀明だって豪邸に住んでるわけでもなく、けっこうかつかつの中でやってきた。

 日本のアニメは海外でかなり違法に視聴されていて、クールジャパンの一貫としての産業政策はコンテンツの著作権の強化を目的としてる。みんな無料でアニメ視聴してるんだから、そこから金とれば業界も潤うんじゃないかという発想だが、それで本当に成功するのかという意見も多い。無料で見れるからこそ広まったという部分もあるし、金がかかるなら他の優れたコンテンツに取って代わられて、アニメへ注目を薄れさせてしまうだけという結果にもなりそうだ。広告費でも取れればかなり楽になるとは思うんだけどね。

 どちらにしろ、アニメ業界はかなり厳しそうだ。動画のデータは違法にコピーされやすいし、フリー時代の収益モデルを確立できてるとは言えない。それでもそこそこやれてるからマジですごいんだけどね。


ハリウッドとは?

 ハリウッドの特徴はなんと言っても大規模な産業体制だ。たくさん金使ってクオリティの高い作品を作り、著作権をガチガチに管理して世界中に売り出す。莫大な金をかけてコンテンツつくれるのは、世界中の市場に売りだして収益を上げることのできるチャネルがあるから。

 最先端の技術と一流の人材をつかうハリウッドの作品をちゃんと金払ってでも見たい人は多く、陰りが見えてるにしろ、無料のコンテンツが溢れる中でまだそれなりのプレゼンスを保っている。クオリティの高い作品と大規模な宣伝、広い海外市場を狙った戦略で、「無料」の時代を生き抜こうとしている。グッズとかテーマパークでも稼げるから、権利関係にはめちゃくちゃ厳しい。

 ハリウッドの作品は、失敗できないし、全世界に発信するから内容は保守的になる。一方で、日本の漫画やアニメは、一部の熱心なファンがいてくれさえすればいいから自由に作品を書きやすい。別にどちらが良いというわけではなく、ハリウッドも保守的な中に革新性があるし、単純に作品の質が高い。ただ、ハリウッドと比較してわかるのは、日本のコンテンツ産業は中小規模で、一部の人がハマってくれさえすれば収益が成り立つシステムがあったと言うことだ。それが、特徴的で優れた作品を生み出してこれた理由でもあると思う。


ゲーム業界

 ゲームは、まさにデジタルなコンテンツなんだけど、違法コピーがしにくいという特徴がある。画像データとか動画データは複製するのがめちゃくちゃ簡単なんだけど、ゲームというのはプログラミングも含むので、特に最新の作品になってくるほど簡単には違法に複製できない。だから収益の仕組みとしてはかなりしっかりしてる。(アプリケーションとかも同じだよね)

 でも一方で、ゲーム業界は否応なく「ハリウッド化」している。なぜなら、機種の性能が上がっていくにつれて開発に金がかかるようになるからだ。WiiUとかPS4の時代にスーファミの規模の予算でソフトを作るなんてことは不可能だ。だから大規模な設備投資が必要になり、ゲーム産業はハリウッド化して、失敗ができないから保守的になってくる。

 コンシューマーゲームの売上は、(任天堂やソニーのプレイステーションなどが海外に影響力を持っているにしろ)国内では2006年くらいをピークにして減り続けている。それでもゲーム市場全体としては成長し続けている。従来のコンシューマーゲームのかわりに、爆発的な勢いで台頭してきたたのが「ソーシャルゲーム」だ。


無料(フリー)の時代に成功したソーシャルゲームとアイドル産業

 ソーシャルゲームもAKBも、ものを売る産業から、コンテンツ自体を「運営」してユーザーを惹きつけ、収益を得る産業になっている。ソシャゲの基本プレイ料もAKBの楽曲も無料で楽しむことができるが、のめり込むと金が必要になる。このような仕組みはクリス・アンダーソンの提唱する無料(フリー)の目覚ましい成功例だろう。というより、アンダーソンが著書で上げている事例の数々よりもずっと優れている。

 日本において、というか世界中を見ても、現状でもっとも無料のコンテンツをベースにした成功例はAKBとソーシャルゲームではないだろうか。AKBは今やそれに批判する人すら回収してしまうほどの無視できない巨大なコンテンツだし、和製ソーシャルゲームの異常な収益率は(現在は下がってきてるにしろ)圧倒底なものがあった。(だってDeNAとかGREEとか、まだ設立から10年くらいしか経ってないからね)


 AKBもソーシャルゲームも日本型のコンテンツ産業の延長上にある。だからこそ、ここまでうまく無料をベースにした仕組みにうまくハマったのだ。ソシャゲで課金をする層はゲームにもよるが、大体プレイヤーの1,2割だそうだ。AKBはよくわからないが同じようなものかもしれない。それは、一部のファンやオタクが漫画やアニメを買い支えたりするのと同じ仕組みだ。

 日本型のコンテンツ産業は、低予算でペイラインを下げ、一部の層に支持されればそれでリクープが可能になるものが多かった。そのため、思い切った内容に踏み込むことができ、色んな表現に挑戦できた。だからこそ日本のコンテンツは発信力を持ち、多様な作品が存在し得た。そして、その土場でそれぞれの受け手や作り手が培ってきた感覚を、AKBやソーシャルゲームはうまくすくい取っていると言える。というより、何かがピッタリとハマったというのが正しいのかもしれない。それが良いことか悪いことかはまた別の話だ。(多分それは次か、次の次くらいのエントリーで論じる)



 けっこう長くなってしまった。この記事ではコンテンツのデジタル化、フリー化に伴う影響を書いてきた。ゲームは収益構造がしっかりしてるからいいとして、音楽業界もまあ大丈夫だと思うし、出版だって書きたいやつは金にならなくても書けばいいじゃんと思うけど、僕が今一番心配なのはアニメ業界なんだよね。「まどか☆マギカ」がパチンコになってるというのは、何かいたたまれない気持ちになる。現場のアニメーターだって相当大変らしいしね。アニメの中に直接宣伝入れちゃえとか色々案は出されてるみたいだけど、なかなか難しい。どうにかならないものだろうか…。




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