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しっきーのブログ

ひろいこころで\(^o^)/

生命保険のカラクリ

本の感想

 作者はライフネット生命の代表取締役、岩瀬大輔さん。ライフネット生命は宣伝打ちまくってるからよく見る。四大生保(日本生命、第一生命、明治安田生命、住友生命)に見られるように、日本において生命保険業界はめちゃくちゃ力を持ってる。保険という公共的な部分を担っているし、投資機関としての影響力も大きい。日本は世界的に見ても保険大国で、国民一人あたりが加入している保険金額が約1600万円。アメリカの580万、イギリスの260万、ドイツの200万と比べると突出して大きい。(これは2000年のデータ、本書35ページに載ってます)

  アメリカなんかでは早い時期から生命保険業界が銀行、証券、投資信託などと厳しい競争にさらされたので、生保がシェアを高めることができなかった。女性の社会進出が進んでいたので遺族保障のニーズが低かったというのも大きい。日本の生命保険業界は、女性の労働力率が低かったから旦那の遺族保障がよく売れ、金融自由化も遅れた。何より、様々な商品を開発し生保レディーによって営業をかける生命保険業界の戦略が功を奏した。

生命保険のカラクリ (文春新書)

生命保険のカラクリ (文春新書)

 

  保険の原点は、もともと非常に単純だ。ある共同体の中で、たまたま運悪く自分が怪我をしてしまったり、稼ぎ頭が死んで何もできない家族が残されてしまったりする。誰にでもそうなってしまう可能性はある。そうなったときに人生が破綻してしまわないように、みんなが少しずつお金を出し合ってプールし、不運に見舞われてしまった人の救済にあてる。不確実性、リスクに備えてお互いに助けあうシステム、それが保険だ。だれも自分が将来酷い不運に遭うことなんて想像したくない。みんなが納得して保険に入るシステムがあるというのは成熟した社会の証だろう。

 

 生命保険の商品は複雑でよくわかりにくいが、もともとの機能は次の3つしかなく、それらの組み合わせでできている。

①   遺族保障……保険加入者が死亡したとき、残された家族のために所得を保障する。

②   医療保障……病気、怪我などで手術、入院してしまったとき、その医療費の負担を軽減する。

③   生存保障……将来に備えるために保険金という形でお金を積み立てる。貯蓄や年金と同じ仕組み。

①の遺族保障は、現在の生命保険の核であり、命に対して保険をかける。つまり毎月少しずつお金を払って、もし不慮の自己に見舞われて自分が死んでしまったら、残された家族に保険金が支払われる。僕は若いし彼女もいないから具体的な想像はできないが、やっぱり家族ができたら遺族保障というのは非常に大事になってくるんだと思う。ちなみに失明や手足の切断など、死亡に準ずる高度障害の場合に対する保険も、この遺族保障のカテゴリに分類される。

②の医療保障に関しては、日本では健康保険制度が非常に充実しているので、民間の医療保障は補完的な位置づけにすぎないし、著者の考えによると無駄なものが多く、医療保険に金を使うくらいなら貯金してそれをそのまま医療費に当てたほうが良いらしい。ちなみにアメリカではまったく状況が違って、アメリカの医療保険は年間数十万かかるらしい。そのかわり、かかった医療費や入院費をすべて負担する、みたいに日本の民間生保と違ってわかりやすいものが多い。アメリカでは公的な医療保険制度が存在しないから、民間の保険に入れない低所得者層は、救急車で緊急入院しようとしても保険に加入していないから門前払いにあって、病院たらい回しにされたあげく死んでしまうみたいなことがざらにある。この点で、誰もが医療を受けられる日本の公的な健康保険制度はもっともよく整備されていると言える。それが空気のように存在しているから、逆にありがたみを持ちにくいのかもしれない。

③の生存保障だが、これは有り体に言えば貯金である。べつに保険機関を使って貯金をする必要はなく、銀行にお金を預けたほうが好きなときに引き出せる。保険には定期保険といって、「一定の機関ごとにお金を払い、その期間中に何かあれば保険が降りる、いわゆる掛け捨て保険」と、貯蓄型保険といって、「保険を下ろすことなく無事故、健康な状態で満期を迎えたら、健康ボーナスという形で保険料を返す保険」がある。ここで、面白い心理テストがある。『保険料を10万円払って保障のみを確保する保険』と『保険料を20万円払って、無事に満期を迎えたら10万円払い戻される保険』の二つがあり、どちらを選ぶ人が多いかというと、結果は5対95で後者だったらしい。ほとんどの人が、後から10万円もらえるほうがお得だと感じたのだ。両者の間に金額的な差はなく、後者のほうは期間中にお金を使うことができないし、もし何かあって保険金が降りた場合には払い込んだぶんが返却されないので損をしていると言える。しかし、「行動経済学」という分野で示されるとおり、消費者は経済的な合理性だけで動くわけではない。まず「切り捨て」という言葉は何となく損な気がするし、「満期を迎えたら払い戻し」というのは得な気がする。保険会社はそういった消費者の心理を巧みに利用して「養老保険」や「終身保険」などの商品を開発し、大きな利益を上げた。

 遺族保険、医療保険、生存保険という要素を巧みに組み合わせて、保険会社は複雑な商品をつくる。たしかに契約者の細かいニーズに答える、という部分はある。しかし保険はその性質上、「お得」な商品というものは存在しない。みんなで積み立てて誰かが不運にあったら助ける。仕組みとしては非常に単純なものだ。あくまで自分自身が払い込んだお金を、手数料を抜かれた上で返してもらっているにすぎない。保険会社は色々な保険を複雑に組み合わせてパッケージ化し、新しい商品をつくる。複雑になればなるほど、自分が何かあったときにその保険が適用されるのかどうか、よくわからなくなる。それを「お得」だとか「手厚いサポート」だとか言ってうまく契約させ、利益を上げるのが保険会社の手法になる。著者は、保険は自分が理解できる範囲の、シンプルなものだけにすべきである、と主張する。自分が支払う保険料と、何か会ったときに降ろされる保障は本来一対一で対応しているべきで、何が何だかわからないくらいごちゃごちゃしているのは保険会社の戦略なのだ。

 保険会社が経費を賄うために取る手数料部分のことを、「付加保険料」と呼ぶ。保険社員や営業の生保レディー達の給料、保険会社の維持費、経費を負担しているのは契約者である。どれだけ引かれているのか、その「付加保険料」を大手生保は開示していない。著者が起こしたライフネット生命はそこをちゃんと開示しているらしい。開示しているということはその低さに自信があるということで、理由は営業員をあまり持たないネット生保だから。

 保険とはつまるところリスクに備えて金を集め、何かあった人にそれを配るという仕組みに過ぎない。(まあ集めた金の運用とかもあるんだろうけど)それを管理するのが保険会社であり、その手数料を払うのは契約者だ。どれだけの手数料がかかるのかということが問題で、大手生保は大勢の従業員とか生保レディーの給料を支払わなければいけないぶん手数料は高い。一方でネット生保は営業員を持たないのであんまり手数料はかかりませんよ、という話になる。(まあ広告をたくさん出すのもお金かかると思うが)

 保険の商品は数字なので、どれもほとんど違いはない。結局は所属する団体とか、営業員の人柄とかで選ぶ人が大半だったのだろう。売り手である保険会社と買い手である国民との間に大きな情報格差があるから成り立つビジネスモデルだ。営業員は厳しいノルマを抱えているし、必ずしも必要でない保険を複雑にしてうまく売ることができれば儲かる。そのために契約者は必要としているよりも重い保険料を支払うことになる。

 保険がしっかりと運用されるなら、その手数料はできるだけ少ないほうがいい。しかし宣伝や営業をかけないと誰にも知られることがない。広告で目に留まり、加入しようと思ったその保険の広告料は自分が支払うことになる。ジレンマですよね。まあ、ネット生保というのは保険の新しい仕組みだと思う。たくさんの従業員と営業員を雇うよりも、ネットを通して手続きを簡略化したほうが手数料(付加保険料)は少なくてすむ。それがそのまま契約者の負担を減らすことにもつながる。ライフネット生命は2008年に営業を開始した。既存の保険会社の資本が入っていない独立系保険会社としては74年ぶりだそうだ。

 

 僕はちょこちょこ就活をしていて、セミナーの席がどこも埋まっているなか、生保の最大手、日本生命の懇談会がたまたま空いていて運良く参加することができた。それでエントリーシートも出したんだけど、「日本生命は、実際に人と人とのやり取り、顔を合わせたサービスを通して、相互扶助という社会のあり方を担っている。生命保険という分野に人間同士の深い信頼関係が介在しているということ、日本生命が積み上げてきたその歴史は決して失われてはいけないものだと感じた。私はそういったものを守るために色々と頑張って不眠不休で働きたい!」みたいなことを書いた。……なかなかに苦しいよね。

  そして、非通知で電話がかかってきて、◯日の〇時に予定空いてる?本社に来てね!と言われた。これって噂に聞くリクルーターってやつ? 正直就職する気はないし行きたくもないのだが、非通知だしキャンセルの電話もできない。こわい。