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しっきーのブログ

ひろいこころで\(^o^)/

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深夜に江ノ島から藤沢まで歩いた話

日常


 先週の金曜日、電車を間違えて家まで帰れなかった。


 2年ぶりくらいの友達と数人で飲みに行って、楽しかった。丸の内OLだけどキモヲタの僕と普通にしゃべってくれたり、社会人だからとお金を多めに出してくれたり、ぐう聖としか言いようがなかった。


 そして、帰りの電車を乗り間違えた。

 東京駅近くで会ったのだけど、僕の最寄り駅はそこから東海道線で下って藤沢で乗換え、小田急線の上りの電車に乗れば着く。で、間違えて反対側の「片瀬江ノ島」方面の線に乗ってしまったのだ。

 車内では本を読んでいて、気づいたら「鵠沼海岸駅」に止まっていた。すぐ降りて電光掲示板を見たが、上りの電車はもうなかった。


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 普段から帰るときに乗る電車が江ノ島方面なので、それで間違えてしまったのかもしれない。ぼうっとしていたというのもある。ちょっとお酒を飲んだので、自覚はなかったけど酔っていたのかもしれない。

 さらに不幸なことに携帯の電池がなく、電車間違えたとツイートしてすぐに画面が暗くなった。




 歩くしかなかった。

 長いこと近くに住んでるけど江ノ島に行くことはそんなになくて、土地勘もない。ただ、路線に沿って歩けば駅には着く。藤沢まで行けば漫画喫茶もタクシーが止まっている場所も知っている。


 鵠沼海岸駅は「埜庵」くらいしか印象がない。ただ、静まりかえった商店街の青と白のタイルは夜に沍えて鮮やかだった。歩いていると、木造に瓦葺の古い建築とサーフボードがかけられた砂壁の民家が並んでいて、不思議な感じがした。


 夜12時半を過ぎて、ぽつぽつ明かりがついてるところもあるのだけど、大抵の家は本当に人が住んでいるのだろうかと思うくらい真っ暗に電気が消えていた。

 ちょっと怖くなってきたところで、すぐ横に小田急線が流れ、遠く過ぎ去っていく光の線をぼんやり眺めていた。(冷静に考えればおかしいと気づくはずだけど、頭が働いてなかったのだろう。)


 しばらく歩き続けると、右足が痛くなってきた。靴の裏を見るとソールが削れてほとんど無くなっていた。おそらく2年以上は同じ靴を履いている。足に神経を凝らしてみると、アスファルトと足の裏が直接当たるような痛みがあった。とっくに新しいものを買うべきなのにしていない。この件を問わず、最近いろいろな億劫さのツケが少しずつ回ってきているような気がしていた。


 歩くたびに長閑になっていく風景から、嫌な予感はしていて、それでも考えるのが面倒で歩き、やっぱり予感は的中した。僕は藤沢方面と真逆の路線を辿って、「片瀬江ノ島駅」まで来ていたのだ。失敗に失敗を重ね、普段から迂闊な僕でもなかなかやらないほどのミスだった。



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 呆然として海まで歩いた。こういうとき、Twitterなんかにでもつぶやけばちょっとはなぐさめになるかと思ったけど、携帯は死んでいた。近くに漫画喫茶などがあったとしても検索すらできない。


 海岸に座ってしばらく波を見ていた。

 こういう種類のことに慣れてしまってるよな、と思った。僕は、これといって成功したこともないし、誇らしげなこともないし、恋人ができたこともない。

 失敗の経験とか、惨めな思いをしたということが、何かの糧になるとはもう思っていない。強い心をつくるのは、後悔でも衝動でもなく、習慣だ。淡々と、注意深く、一つ一つやるべきことをこなしていくこと、それを徹底して身体に覚えさせていくしかない。翌日も仕事があって、やるべきことは一刻も早く家に帰り、しっかり眠って体調を整えることだった。


 公衆トイレの周辺でDQN達がたむろしていた。

「タクシー待ってるとこ知らない?」

 と聞いたら、

「あ、使わないんでわかんないっす。さーせん」

 と返ってきた。案外礼儀正しいやつらだったし、夜中に仲間内で集まって騒ぐって、少なくともブログなんか書くよりはよっぽど健全なことだと思った。


 でもタクシーはそこからすぐ近くの小田急線の駅に2台ほど止まっていた。運転手さんに藤沢までの料金を聴くと1700円から2000円と言われた。さらに出せば、安くはないけれど、最寄りの駅まで送ってもらうことだってできる。


 タクシーには乗らなかった。

 海岸で考えたことと矛盾してたけど、自分でもよくわからない意地のようなもので、最後まで歩きたくなってしまったのだ。不合理な選択をしてきて、そういうつまらないものにこだわり続ける習慣かもしれなかった。


 歩き出してすぐに後悔して、それでも、歩くしかない。

 さっきまでの路線を引き返し、行き止まりが見えると左右に道を探し、あみだくじをたどるように歩いた。道中は物寂しく、ときたま紫陽花が見事に咲いていたけどあまり関心は持てなかった。自販機が見えるたびに品揃えを調べるのがささやかな楽しみだった。ファンタのアップル味を買って飲んだ。風は暖かく優しく吹いていた。足の痛みは増していったけど、まあなんとかなるものだった。


「鵠沼海岸駅」に戻ってきたときは、わかっていたけど、どっと疲れが来た。

 しかも、その先の藤沢までの道を、大体この方向だろうと歩いていたら、路線を見失ってしまった。


 迷って無駄に歩きたくないので、念のため近くを歩いていた人に道を聞いた。その人も藤沢まで歩いて帰る途中だったらしく、一緒に向かうことになった。

 体格の立派な兄ちゃんで、藤沢で居酒屋チェーンの社員をしているらしい。同じ職場の彼女を歩いて家まで送ってきて、その帰りだった。なぜか深夜のテンションだったから色々と話した。居酒屋は女の子のバイトが定期的に入ってくるし、酔っぱらいなどのトラブルもあるから、頼れるような立場にいるとモテるそうだ。

 彼は22歳で年下だったのだが、僕よりずっと貫禄があった。18歳から社員になり社会人4年目で、ブラックな職場で揉まれ、同期のほとんどは辞めていったそうだ。

 居酒屋の仕事で生き残るには、ミスしても気にしないくらいの性格でなければならないそうだ。ただつらくて辞めるとか面倒だから辞めるという人はそんなにはいなくて、実は人に迷惑をかけるのが嫌で辞める人が多いらしい。居酒屋の仕事は、自分のせいで他のスタッフに迷惑をかけたり、誰かの仕事を増やしてしまう時期が必ずあって、そこで多くの人がプライドを傷つけられる。でも、その時期を抜け出せば適当にやってても仕事はできるようになっていく。だから気楽にやってるやつが残りやすいとのこと。なかなか勉強になった。

 彼は自分で自分のことを底辺っすよと言っていたけど、彼女を片道30分以上歩いて送っていけるより幸せな生活が他にそれほどあるとも思えなかった。

 あとはハンターハンター面白すぎだよなみたいな話をして、藤沢駅に着くと別れた。

 名刺を貰って、店に行けばたぶん10%引きくらいはしてくれるらしい。近くに住んでる友達がいないから行けないと思う。すまんな。



 藤沢の漫画喫茶に入り、携帯を復活させて時間を見ると2時半だった。ものすごく長い旅をしてきた気がしたけど、2時間とちょっとしか経ってなかった。そして、そのあと5時半まで「ベルセルク」を読んでしまった。寝不足のまま漫画喫茶を出た。


 つまり一番の戦犯は「ベルセルク」で、まあそんな感じなんだけど、みんな、がんばろうぜ。



ベルセルク コミック 1-37巻セット (ジェッツコミックス)

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